ふと思いついたので、「土方さんと○○」で小話を書き散らそうと思います。
気が済むまでやります。
すべて土方さん受です。
今回は「薬」を入れてみました。
というわけで「土方さんと薬」でひとつ。
以下「土方さんと自白剤」から読めます。今回は高土。
銀魂世界で自白剤が似合うのは杉様しかいない…
捕えた土方に盛った薬の影響は覿面だった。
天人がきやがってからは自白剤の類も随分進化している。
ふらふらとおぼつかない足取りで土方は目の前に進むと
座り込む。
おれの顔をじいっと見つめた後、ふいに、
「もう痛くねェのか?」
言う。視線が俺の片目に注がれてんのがわかって
「あぁ……」
そう言ってやると土方は少しほっとしたような顔をした。
「なら、いい」
「俺の心配してる場合か」
驚きと呆れで言うが、土方は俺の話を聞いていないのか(聞けないのか)
「俺の仲間は皆傷ばっか作ってくるからな」
そういった。
「お前だってそうだろう」
「俺はいいんだよ。誰も俺が死んでも哀しまねェ」
本気で言ってるのかと聞こうとしてやめた。
薬の所為で嘘がつけないんだ、本気でそう言っているに決まってる。
死んでも誰も哀しまない。
んなこたねェことくらい俺にも判る。
コイツに群がる人間どもの鬱陶しさを見てりゃすぐ判ることだ。
が、コイツにとっての事実がそうなら、真実は意味を成さないと判ってもいた。
「そうかねェ……」
教えてやる義理はねェ。
のっけから驚かされたが、とりあえず聞きたかったことを口にする。
「お前、銀時とはどうなんだ」
「どうもしねェ」
きっぱりと応えられて面食らう。
「そうか……」
「あいつは皆のものだしな。俺にはアイツがときどき眩しい」
本当に眩しいものでも見るように土方は眼を細める。
それは恍惚の表情にも似た美しいもんだ。
俺につき従う連中にも同じ表情を見せる奴が沢山いたがヤツラの目は濁っている。
銀時の野郎を思い出す土方の眼は澄んだ水のように美しい。
が、何故かそれに苛立った。
強引に引き寄せると土方は驚いたように綺麗な両目を瞬かせ、
胸元から俺を見上げてきた。
「寂しいのか」
見当違いのことを言いながら土方は悲しげに笑う。
「俺もさみしい。銀時は『みんなの銀さん』なんだって知ってたのによ」
そう素直に言うと土方は敵である筈の俺の腕の中で眼を閉じた。
薬の所為で疲れやすいんだろう。
抱きしめたこの男が眠ってくれてよかったと想う。
腕の力が強まるのをとめられない。
組織の中にいながら、どうしてこんなにお前は孤独なんだと尋ねてやりたい。
この男に抱いた感覚が愛しいというものに似ているのだともうわかっていた。
お前がこんなにさみしいのはお前と俺の孤独が似たものだからだ。
お前は俺と違って日の光の下で生きる権利があるのに、
どうしてそんなにさみしいツラで笑うんだろうなァ。
いつかの、この男にとっての反逆者みてェな物言いになるのはいただけねェが、
この男は俺の孤独を知っている気がした。
なんでお前は俺の世界に来ねェんだ。
[7回]
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