今日良い夫婦の日(11月22日)について聞きました。
奥さんが実家に帰った知人の話を聞いた後だったので、感慨深いです。
銀さんは結構「旦那」って呼ばれますが、やっぱりあの落ち着きがそうさせるんですかね。
で、銀さんと土方さんが夫婦になったらやっぱ土方さんが妻ポジションですよね…?
でも稼ぎがあるのは土方さんか…
前置きが長くなりましたが、土方さんが「実家に帰らせていただきます」を使うとどうなるのか、
なんか考えたらできました(笑)
「旦那がお呼びです」
フザケタ物言いの男を目の前にしながら舌打ち。
びくっとした男の前で気を利かせた部下が運んできた椅子に荒っぽく座る。
足を組み替えていくと、相手の表情が凍りついた。
「ぁあ?」
凄んで見せると相手はまたびくっとする。
こっちはスーツも着こんで、さて出かけようとして煙草を咥えていたってのに。
本当はこのスーツはあんまり座れない。
皺になるからだ。
でもま、いいか。
「何の用だ」
言ってから、ふっと美形は笑った。
本当に素直に。
見惚れて呆気に取られた相手はぱくぱくと口を開閉した。
なりふり構わず、どう言いくるめたのか部下まで使って己を呼び戻そうとしているのだから
笑うしかない。
何だってんだ、本当に。
殆ど献上物のように仰々しく、差し出されたのは電話の子機。
繋がっているんだろう先は予想の範囲。
するりと相手の腕を掴んで引いてやる。
別にお前に怒ったんじゃない、お使いさせてむしろごめんな、くらいの気持ちで。
相手は顔を真っ赤にしてまた口を開閉させるだけの装置に成り下がった。
頭を撫でてやった後、目線で促して原田に連れて行かせた。
ザキがいないのは不便だな。
スタティックな動きに似合った美貌のまま、美形は仕方がないので子機を取り上げた。
回線の向こう側の「旦那」とやらに向かって一声、とびきりの明るさと一緒に。
「ハロー」
面食らったような沈黙。
気が短い美形は切ろうかなと考えたが、知り尽くしている相手は早かった。
「待って」
ステイ、と言われて待ったことは無い。
沈黙を怒りと取ったのか、相手はちょっと口ごもった末、
「ごめんなさい、帰ってきてください」
そう素直に言う。
「やだ」
だから素直に言った。
「ごめん、俺が悪かった」
なんのことだ。
もし謝っているならそれこそ侮辱だ。
傷ついていると感じてるならお門違いだ。
大体帰るってなんだ。
「俺の家はここだが」
ここが俺の世界で家で、実家で、ああ、なんだっけ。
「奥さんに毎度家出される旦那の気持ちにもなってよ」
泣き落としが入る。
「ごめんねダーリン」
また相手の息を呑む音。
それから。
「奥さんと言ったのは謝る。でも別に所有物みてェに思って言ってるわけじゃないのは、わかってくれない?」
聡い相手は俺がなんでご立腹なのか、ダーリンと言っただけであっさりと看破した。
「旦那、ってーのはさ、銀さんのあだ名みてェなもんでさ、お前を奥さんて言ったのはさ、
俺のただのフェチズムっていうか…」
だらだら、言わなきゃイイのに。
いい男なのに。
「女扱いされて喜ぶなら俺は相当なヘンタイだな」
ぴしゃっと言い切ってやれば相手が真っ青になっているだろう想像が出来た。
「思ってないって、お前がいい男なのは知ってるって」
「そりゃどーも」
そりゃどーも。実はあっさり機嫌は直っていた。
わざわざこうやってバカみたいなやりとりをして、遊んでるだけなんだってことは。
「本当に。俺が女なら惚れてるぜ」
互いに分かってる。
セックスを身体をあわせる、と言い換えても支障無いくらい、
薄い性欲しかない美形はときどき、こうやって避難する。
非難、しているわけではなく、避難しているのだ。
ヤリ殺されるなんて冗談じゃない。
実家に帰ります、という奥の手があるせいか一応は優しくなるこの男が。
「帰ったら覚悟しろよ」
低く、ぞくりと脊髄がイッちまうような声で脅してくるのが、実は。
好きだったりするから始末が悪い。
[14回]
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