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アヤカシ、小話。
落ち着いたらサイトに移動します。
銀土です。
以下、「あめ」をクリックしてください。








「雨だね」
「ああ」

軒下で雨を二人して眺めている。
「やまないね」
「そうだな」

土方は話しかけられても珍しくちゃんと言葉を返してくる。
俺たちは不思議なくらい気があって、考えることも行動も似ているから、偶然出くわすことも、雨宿り先が同じなんてことも別段珍しくない。

慣れてしまっただけで当初はお互い、いや特に土方がだけど、突っかかったりぶつかったりした。

その二人が、いろいろあってこうして二人静かに雨を眺めているわけだから人生は不思議だ。


ぴちゃん、ぴちゃんと小雨の音に混ざってなにかの足音が聞こえてくる。

「………?」
ナンだろ。でも気配が無い。
濡れ鼠になった動物だろうか。

「ね……土方君」


何気なく横を見ると土方の身体がびっしょりと濡れていて俺は驚いた。
「どうしたよ、おい!」
さっきまで精々俺と同じ程度にしか濡れてなかったはずなのに、濃紺の着流しは水気をたっぷりと吸い込んでまるで黒かったかのようだ。
髪の先から雫まで滴らせて、土方は平然と前を見ている。
「お前………」


「このくらいで済んだんだから、いい」
土方は呟くようにそう言うと小雨の中を出て行こうとする。
「ちょ、待てよ」
慌てて俺は土方の腕を掴んだ。
「お、い……」
その手首はぎくりとするほど冷たかった。
言葉を失った俺に土方は冷ややかな眼差しで
「用がねェなら放せ」
そういって苛立ったように手を振りほどこうとする。

「ちょ、おまえね……あーもういいから!!」


結局腕力に物を言わせて嫌がる土方をホテルへ連れ込んだ。
鍵を受け取るとさっさと室内に入り、土方の濡れた着流しを剥ぎ取ろうとしたが、思わぬ抵抗にあう。
「はなせ!」
「馬鹿、風邪引くだろ……」
無理やり引き剥がそうとした着流しから覗く肌に俺は目が釘付けになった。
「おい、おま……」
嫌がる土方を押さえつけて強引に上半身をはだけさせると、鎖骨から胸元にかけて肌には無数の
赤い線が走っていた。
引っかき傷に少し似ているけど、血は出ていない。
土方はばつの悪そうな表情で眼を伏せた。
「ど、したそれ」
なるだけ優しい声で(震えていたかもしれない)尋ねたけど土方は答えようとしなかった。
「何か捕り物でもあったのか」
いや、此処の所デカイ捕り物は無かったはずだ。
真選組は悪い意味で目立つから何かあれば必ずニュースになる。
というか、これは。
「どっかぶつけたとか、なんかアレルギー?」
信じてないことを言ってみる。
あまり人のプライバシーに踏み込みたくは無い。がこれが土方のこととなると多少変わってくる。
だって。
「……一昨日会った時は、なんともなかったよね」
一昨日の夜、正確には昨日の朝まで、散々愛し合っていたわけだから。
酔っていた土方と違って、俺はほとんど酔っていなかった。
溶けたような土方の表情を堪能して楽しんだけどこんな痕は無かった。


「わからねェ。雨が何か連れてきたんだろ」

土方はそれだけ言うと俺の前で少し目を伏せた。叱られたこどものような幼い仕草だった。
「風呂、はいる」
立ち上がった土方の手首を思わず掴んでしまって、腹をくくって土方の視線をしっかりと受け止めた。
こういうときだけは間違えたくない。
「一緒にはいろう」
土方は嫌だとは言わなかったけれど、なぜか少し悲しそうだった。
雨に濡れた土方は泣いているようで俺は少し怖かった。
「だいじょうぶ、すぐあったかくなる」
土方の手を引くと浴室にむかった。
俺はおまえをどこにも行かせない。


生きているのか生かされているのか死んでいないだけなのかただのきまぐれか。
断罪の音に似た轟く稲妻も雨音もこの心臓の鳴る音を消すことはなく。
何かに感づかれる罪の音もまた消えない。

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