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サイトを開設して以来2年連続で節分の小話を書いていたのですが、
当日丁度病院のお世話になっておりまして、アップできませんでした。
で、時期を逸したのでどうしようかなと思っていたのですが、
メッセージ戴きまして、
時節物がほぼ無いのがウチのサイトですし、当日じゃなくても良いかなとも思いました。
ので、3年目の今年も2月3日の小話、アップしますね(笑)

アヤカシ設定で、小説部屋にある2月3日、弐月三日、に繋がっています。
以下よりどうぞ。





少々大掛かりな捕り物があった日。
人を斬って、熱が上がって、仕方がないので横になっていた。

ことん、と音がしてゆるい眠りの淵から起き上がる。
土方がゆっくりと身体を起こすと、布団の端に小さく、わらわらと子鬼が座っている。
子鬼たちは小さな両の手に小さな氷の塊を持っていて、それを小さな口で吹いて、
土方目掛けて冷たい風を送ってくる。
燃えるように熱い身体を冷ますように、小さな子鬼は一心にその作業を繰り返す。

小さな子鬼の手の中で、それでも氷の塊は溶けて、
ことん、と時々滑り落ちている。
いつからそうしていたのだろうか。
足元が水で満たされている者もいる。
小さな手が赤く染まってしまっているのが可哀想で、
「いい…ありがとな」
ぎこちない笑みで告げるが子鬼たちは首を振った。
土方の頬が、不安なほどに紅く染まって、その身体の不調を表わしている。

小さなものがいたいけな仕草をしているのに弱い。
困ったな、と土方が思うと同時に。

音も無く、縁側の障子が開いて、静かに男が入ってくる。
銀色の髪と角を持つ、男は土方を見ると常のように微笑む。
子鬼たちが、やはり緊張で身体を強張らせた。
両の手に大事な塊を抱えているので礼を失してしまうとでもいうように。
目線でその緊張を解いてやると、
男は常の優雅な動きとは異なり、
少し急いたようにいざりよると、土方の頬に触れた。
ぴくんと、土方は布団に投げ出していた指をはねさせたが、
男は自らの白い指を少し力を込めるようにしてその上に重ねた。
土方が問うように見つめると、男はその指を軽く握って、撫でた。

「なにか…悪い気にでも魅いられたか」
男はそう呟くと、静かに土方の額を、やはり白く優しい指でそっと覆った。

「ん……」
指先から流れ込む冷たい風が、火照った身体をゆっくりと冷ましていく心地よさに。
土方は素直にその手に懐く。

「子鬼どもが、貴公の哀しみを憂いていてな」
男は呟くと、子鬼たちに告げた。

「ほら、それはもう仕舞いなさい。困らせてしまっている」
子鬼たちは顔を見合わせ、静かに頷くと、氷の塊をぱくんと食べた。

その可愛らしい様子に。
ふふ、と思わず土方が笑うと子鬼たちが照れたようにあちこちで固まって、
肩や肘を軽くぶつけ合った。

そっと、男が土方の背を支え、ゆっくりと布団に戻そうとする。
「いい………」
土方は首を振ったが男は厳かに告げた。
「貴公は、もう少し眠られたほうが良い……身体の奥が、まだ震えている」
土方は何か言おうと唇を開こうとしたが。
もぞり、と子鬼が布団の端にもぐりこんで、控えめに見あげてくるので。
素直に横になった。
小さな子鬼たちが僅かに動く。
もぞもぞと動き回るいくつかの塊が可愛くておかしくて。
涙が出た。

土方はやっと、己が哀しかったことを知った。

 

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