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ちょっと小話。
モブキャラ視点です。ので、苦手な方はご注意を!



「どけよ」
そういわれたので素直に道を譲った。
その拍子に視界を黄金が腐ったような色合いの髪が揺れた。
沖田隊長と隊務以外で積極的に口をきいたことは無い。
呼吸以外の用途で、空気に口を開く価値など無いからだ。

沖田隊長は基本的にあまり自分から話す男ではない。
いつも馬鹿のような模様のアイマスクをしている。
人の話の輪には殆ど加わらない。
局長や副長に対してはそうでもない。ような気がする。
局長に対してどうだったかはあまり関心が無いので覚えていない。
副長に対しては、まるでガキの悪戯のようなことを延々と繰り返していて見ていて実に馬鹿馬鹿しい。
隊士たちに見せる、
他人を空気としか思っていないような態度からは想像もつかないほどに、
口を開けば殺してやる殺してやると馬鹿の一つ覚えのようにかしましく騒いでいる。
馬鹿馬鹿しい生き物だ。

18にもなって馬鹿馬鹿しい。

ふと、思い出して舌の根が喉にへばりついた。
家にタチの悪い連中が押しかけるようになったのは5つのとき、
母親が父親に殴られて死んだのは7つ、
父親を殴って家を出たのは10のときだ。
女を抱いたのは13、同じ歳に人を殺した。
いまだ死体は上がっていない。


隊務で人を殺した日。
面倒見の良い原田さんは俺達を気遣うように早々に休めと言ってくれた。
副長への報告は俺がしておく、そう言ったので俺は首を振った。
「書類を届けなければいけないので、ついでに行ってきます」

ついで、と言うと原田さんは少し困ったような顔をしたが、
頼むな、と言い、事後処理の指示に向かった。

別になんだっていうんだ。

副長の部屋に許しを得て入室する。
今日のことは勿論この人の策のうちなので、任務には失敗していないというだけの報告だ。
そうか、ご苦労。
それだけ言うと副長は早くあがって休め、と原田さんと同じことを言った。
副長は長い睫で覆われた目を静かに書類に落としている。

初めて、江戸で遊里に行った時のことをふと思い出した。
此の世にこんなに美しい生き物がいるのか、と俺は素直に思った。
3度通えば「こんなものか」と思えるようになった。
こんなものか、と思っても、別に女は美しい。
美しいものは美しい。
俺が思おうが思うまいが死のうが生きようがどうでもいい。

立ち去らないで居た俺に副長は咎めはしなかったが、不思議そうな顔をした。

「ただの殺しとそうでない殺しの違いとはなんでしょうか」
自分でもなんでそんな馬鹿のようなことを言ったのかはわからない。
禅問答のようなことを言うと上司はふうん、とひとつ、なんとも形容しがたい溜息を吐いた。

「違いなんてねェさ」

副長はそれだけ言うといきなり、背後から白い布のかかった盆を出してきた。
唐突に。
「喰うか」
副長はそう言うと、それを俺の目の前に置いた。
俺は黙って布を剥ぎ取る。
中には白い粉に包まれた四角いものが鎮座していた。
じいっと見ると副長はきんつば、とだけ言った。

「いただきます」
そういうと副長はうん、と頷いて書類を捲る動きを再開した。
ぱらぱら捲っていく音につらなって、自分の租借する音が響く。
俺はどうやら腹が減っていたらしい。
ずっと前から。
副長は無駄口をきかない。
簡潔に美しい。
この人を見ているのはこれが多分百とか、そういう数だが、
俺はこの人をどうこう言いえると思ったことが無い。
そういう馬鹿なことをしてみる気は無い。

俺はこの人を見ているのだけが好ましい。




 



モブ隊士君は沖田君と同い年のイメージ。
美人の先生を取り合う悪ガキ(笑)

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