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短めの小話。
銀土。




超過勤務中の室内は何故か息苦しい気がする。
非番だったはずの副長は着流し姿で、
しかし当然のように書類を捲っている。
普段なら多少気も緩む時間帯の勤務が、ここまで気を張っていられるのは多分も何もこの人のせい。
そっと盗み見ると副長は、考え込んでいるのか少し指を唇にあてた。
長い睫、だなと思う。
多分少し、いつもより髪が伸びている。
切る時間が無いんだろうなと思う。
それから、

「あ、」
ふ、と声をあげて副長は唐突に立ち上がって、
障子を開けた。

ざああっと夜の風が吹き込んで、部屋の熱の篭った空気をかき消す。
一瞬の心地よさに俺はわずかに目を細め。
副長の着流しの裾が風に舞って、白い足首が晒される。

副長はそのまま、夜の庭に向かって、
ただしばらく静かに立ちすくんでいた。

くるりと振り返った副長は何事もなかったかのように戸を後ろ手に閉め、
伏せたまつげを少し、本当に少しだけ揺らした。


俺はなんだか胸が苦しかった。


 


 


見上げた月があんまりいい感じなんで、俺は多分浮かれていた。
あてもなく、じゃなくまぁ、なんだ、
無意識のような意識してるみてェな、その中間な感じで、
ふらふら歩いて向かった、仰々しい看板のある屯所の傍まで来て、
俺はちょっと立ち止まった。
アイツ、まだ仕事してんじゃねぇかな。
何となく、こんな月夜には一緒に飲みてぇ感じなんだが、仕方ねェ。

アイツ、せっかくの月夜なんだから、俺と同じようにいい感じに思っててほしい、なんて、まぁ、
そんな恥ずかしい感じの思考。

と、急にざあっと風が吹いて俺の服を揺らした。


同じ風が、今お前にも通りすぎていったらな、
なんて、思ってみた。


 



思考が似ているふたりなので、
こんなこともあったらなと。

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