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小話連投。
土方さん出てきませんけど、総受気味。




「かわいがってた奴なのにな」
「局長は泣いてたよ」
「あの人は顔色一つ変えないんだぜ」

密やかな会話の端を断ち切るように山崎は部屋に入る。
「休憩は終わりですよ~」
「あ、山崎さん」
口々に若い隊士たちが慌てて謝罪を口にし、出て行く。

「おい山崎怖ェ顔してっぞ」
「原田さんこそ」

作ってでも笑うより先に声が尖るのは仕方がない。

「俺ァ、よ。副長が酷い人だと思ったこたァねェ」
睨むように座っていた場所を見つめて、
原田はそれだけ言うと部屋を出て行った。


三日前の話をしているのだ。


組に裏切り者が出た。
斬りかかってきた相手は殆どヤケを起こしていて、
殺さず仕留めるには腕も立った。
オンナにそそのかされて悪事を働くのは稀にある。
だがまさかテロ組織の一部と繋がりのある女だとは思わなかった。

男を斬り捨てたのは副長だ。
確かに、あの人は顔色一つ変えなかった。
情けをかけるには男の罪状は致命的だった。
真選組の存在価値はテロリストの捕縛、殲滅にある。
昨日まで笑いあった人間が目の前で斬り捨てられる。
若い彼らにあのひとがどう映るかくらい予測がつく。
あの人はけして泣かない。
一度も振り返らない。

これが些細なほころびだとして。
もし、そのほころびから組の人間が命を落とすことになったとしても、
彼らは同じく「元仲間」に同情するのだろうか。
安っぽい話だ。

ころりと寝転がっていた沖田が、話を聞いていたのかいないのか、
いつも通り感情を捨てたままの顔で言う。
「何笑ってんでィ、山崎」

「いえ……」
馬鹿らしいと思っただけで。

局長は泣いてた。
あのひとは泣かない。
組織としてのバランスは最高。

あのひとは絶対に振り返らない。
それが自分への罰だとでもいうように。

鬱陶しくない範囲の正義なんて果たして此の世にあるのだろうか。

「…なんてね」


 


黒い髪と銀色の髪の相性って最高じゃないかと俺は思っているんだけど、
土方はどうだろうか。
最初から様子のおかしい土方を伴って、静かに宿に入った。
何かあったんだろうな、と考えて、多分組のことなのだろうなと思う。
人を殺した後の目は、俺にも覚えがあるからわかる。
土方はあからさまに死臭を纏ったり、荒んだりする男じゃない。
どちらかといえばそういったことからは程遠い。
ただ土方を取り巻く空気がいつもより鋭く、痛々しくなっている。
女が遠巻きに秋波を送るような、退廃的な艶があるといってもいい。
それは土方自身には意図的でなく、多分引きずられそうになるのは他人だ。

余所者を殺しても土方は割り切るだろう。
でも、一度でも内側に入れた人間に対してまで割り切れる男じゃない。
俺は少なくともそう感じている。
こういうとき、俺と土方は逢ってもセックスしない。

傷ついているときに身体を求められないというのが、俺は実は嫌じゃない。
もし、滅茶苦茶にしてくれと言われたら、俺は多分拒めない。
でも、そんなの少しも嬉しくない。
自分を傷つける刃の変わりに扱われるより、
ただこうやって静かにふたりでいるほうがずっと心地良い。

ただし、土方はこういうとき、絶対に自分から俺に連絡しない。
もしそれが土方なりの自分への罰なのだとしたら、
俺は随分愛されていると自惚れて良いだろう。

だから俺はいつだってこいつの顔色を読んで動く。
別にご機嫌取りじゃあない。
苦しいときに苦しいと言えない。
不器用なこいつを心底愛しているだけだ。


たとえ此の世にお前の望む正義が無いとしても。
俺はお前を愛しているから。

「…なんてな」

 

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