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6月に入って、もうわくわくしてます。
もうすぐ銀土オンリーですね!!!
今回は壺天屋の天まる様のスペースで売り子をさせていただくことになりました!
ほぼスペースを任せていただく、というわけで責任重大ですが
初売り子、そもそもオンリーというものに今まで行ったことが無い、
というわけで初めてずくしでドキドキしております。
頼りない我が身が、われながら心配です。
なんだろう、遠足の前のような落ち着きのなさ(笑)
こんなですので、おたおたしててもご容赦くださいませ(汗汗)

しかし浮かれて最近は小話がぽんぽん出てきます(仕事中に…)
あれの続きもこれの続きも…
忘れないうちに書き留めたい!!と仕事の合間にもだえます、が、なかなかできず。
ポ/メ/ラとか持ち歩こうかと考え中です。

というわけで以下、小話です。
あるエッセイから着想を得ました。
銀土です。
 




『偶像のポートレート』


「そこの荷物も運んで。それからこっちのも」


ある未亡人からの依頼で俺はその日朝から引越しの手伝いをしていた。
旦那を亡くしてまだ日が浅いのだと、大家のババアの店の客が付け加えていた。
常連客、というほどでもないが割と来る客のようで、俺のことも知っていたらしい。
その客の紹介で、女の引越しを手伝うことになった。
平日だから手伝えなくて悪い、とその客は未亡人に繰り返していたが、彼女は構わないと繰り返していた。
他所でやってくれないかなーと思いつつ、
引越しなら人手が要るだろうと提案したがその未亡人はきっぱりと
「一人分の代金しか払いませんよ」
と言ったので、仕方なく一人で来たのだ。
気の強い女だ。
だが、女の荷物は驚くほど少なく、軽トラに積み込む作業は比較的あっさりと済んだ。
これなら確かに俺ひとりでも何とかなる。
まさか女が自分で運転するのだろうか、と思ったが、後から運転手として人が来るらしい。
この間の客かもしれない。(どう見ても女に気があった)


作業もあらかた終わって、外に出てジュースを飲んでいると、見慣れた影。
ああ、見たことのある色男が来たな、と偶然の素晴らしさにある種の感動を覚えて、俺は汗を拭った。
「…万事屋」
「どったの?土方君」
非番だからラフな格好で、相変わらず隠しきれていない綺麗な身体のラインを俺はゆっくりと見つめる。
「万事屋さん、もうおしまいになさって結構で……」
ドアを開けた未亡人は土方の姿を見て取ると、言いかけた言葉を仕舞って突然家の中へ走っていった。
「ナンだ、ありゃ」
土方が怪訝な顔をする。
「さぁ、化粧直しでもしてくるんじゃねぇの」
解せない、という表情の土方は益々眉を寄せた。
そうやっていても、やっぱり綺麗な男だ。
「んだそりゃ」
だってお前、めちゃくちゃ色男だし。普通の女なら素顔で会うのはキツイだろ。
などと言った所でわかる男じゃないので俺はとりあえず笑っとく。
「や、まぁ、色々あるんでしょ」
あまり他人を疑うことをしない土方は特に気にせず周りを見渡す。
「……引越しの手伝いか」
「うん、そう」
運び出された荷物を乗せたトラックを見て土方はそう言うと、
「ちゃんと働いてんじゃねェか」
口元だけでちょっと笑った。
空気が一瞬、ふわっとした。
あ、可愛い、とか思っていると未亡人が大きなダンボール箱を持って家から出てきた。
ごく自然に土方が、持ってやろうとしてだろう、未亡人に手を伸ばす。
色男はまったくいつでも反射的に色男だ、と俺は思った。
が、どさりと音を立てて女はダンボールを地面に落とした。
叩き付ける強さだった。

「コレを見てください」
荒い動きに呆気にとられた土方の前で、女はいきなりダンボールの中身を開く。
土方は驚いたように目を見開くと動かない。

「あの人の人生の全てが詰まってるんです。貴方が全てだったんです」

女はそういうと睨みつけるようにダンボールの中身を指差し、土方を見た。
女の顔は、時々俺には信じられないくらい怖ェもんに思えるときがあって。
今がそのときだなとふと思う。
俺は、溜息をつくと、中のスクラップブックらしきものを無造作に取り出して開いた。

中身は全て…土方に関する写真や記事だった。
新聞の切り抜きや雑誌のゴシップ記事、ポスターみてェなのから、…多分官報の類。
「貴方はあの人のことなんか知らないでしょうね」
女が固い声を出す。
土方は何も言わず箱を見つめているだけだ。
「あの人は貴方に逢いたかっただけなんです。
それで、この間、テロ予告のあった現場にわざわざ出掛けていって、死んだ」
女は挑むような眼差しで続けた。
奇妙な沈黙。
「馬鹿でしょう。いつもいつもそうだったんです」
女は本当に馬鹿みたい、と呟く。
「貴方に憧れて、貴方の出ている記事ならどんな小さな物だって収集して」
女はそこで言葉を切った。

俺はソレを土方に見せたくないと思いながら手にとって、眺めた。
たくさんの写真。
目線はどれも違う方を向いていて、多分隠し撮りなんだろうなと俺は考えた。
箱の底の方には、白黒とカラーの紙片。
綺麗にスクラップされていたのを、無理やり剥がしたのだろう、表面には糊の様な僅かな痕がある。
古い写真だ。
いったいいつから、土方を追いかけていたんだろうな。

「大切にしていました。私の写真だってロクに撮らないような人が」

だから、あの人が死んで、コレ全部燃やしてやろうと思って。
女はそう言うと高らかに笑った。

「ねぇ、万事屋さん、これが今日の代金です。
それですぐ帰って。私もうその人の顔も、貴方の顔も見たくないわ」

散々見てきたから、紙の上でですけれど。
皮肉な声を出そうとして、失敗したのか、泣き声になっていた。
女はそれだけ言うと気が済んだのか、一度だけ深く頭を下げた。
俺はそれに頷いて、きっちり封筒を受け取ると土方の肩をそっと押した。
土方は一言も口にすることなく前を見て厳しい顔をして、変わらない足取りで進む。


俺は、世界に一言も言い返さない土方の代わりに色んなことを言ってやりたかったけど、
土方は多分そんなこと望まないだろうから、やめた。


暫く歩いて。
煩いくらいの街の喧騒が、かえって安堵を呼ぶ。
「土方」
呼べば、予想通り変わらない表情で土方は振り返った。
こいつは、哀しいときすら哀しい顔が出来ない。
その手をそっと握ってみると
「離せ」
と言い、無理やり俺を振り切った。

弱ってくれれば良いのに。
俺にも世間にも、絶対に甘えたりしない。
「ね、一緒に飲んでかねェ」
「………奢らねェぞ」
「えー高給取りのくせに」

他愛無いやりとりをしながら俺はさっきの光景を振り切るように、ふざけたフリで土方の肩を抱いた。
甘えろって念じて。

だけどおまえは、やっぱり誰の手も掴まないんだって知ってる。
だからこそ、おまえが愛しいんだってことも。

ちゃんと、わかってる。


 

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