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2006年に書いた話なので、かなり今と違いますが、メインの方にある官僚×土方さんと微妙に繋がっているのでここにアップします。
ある程度になったら小説部屋の方に移すかもしれません。
まだ銀さんと出逢った直後の妄想です。
そして昔から私は官僚×土方さんが好きだったんだなぁ…いや、銀土前提ですが。
というわけで官僚×土方が平気な方は以下からどうぞ。


買い与えた刀はどこぞの馬の骨に叩き折られてしまったようで。
新しいのを買ってやっても機嫌は直らない。

押し黙ったままの顔を猫の子にするようにくすぐると睨みつける目が物騒で色っぽい。
「土方」
呼ぶ声に僅かに目を細めただけ。
結局望まれもしない珍しい玩具をくるくると回しながら見せてみたがあまり興味はないようだった。
この、読めない、しかし分かりやすくもある美しい鬼は面白い。
気乗りしなければ上官の誘いも平気で断る男だ。


「お飲み物を」
控えめに入室した男は土方に優雅な仕草で飲み物を差し出す。
「…すみません」
それだけ言うといつもなら気さくに話す「主人の大事なお客」がぼんやりとしているのに男は僅かに目を見張った。
(お姫のご機嫌を損ねましたか?)
古くから仕える男に、からかい混じりに囁かれて主は苦笑する。

この子は、姫などという可愛げのあるものではない。
喉笛を喰らう獰猛な獣のような残忍さと、何も知らない赤子の無邪気さとが恐ろしく美しい形で同居している稀有な生き物。
例えるなら、
笑いながら情人の首をはねる残虐な女王が相応しい。

土方をじっと見つめていると
「銀色の髪が嫌いになった」
やっとそれだけ言う。
「好色な爺にでも言い寄られたかい」
「生まれつきの銀色」
「ああ、件の侍」
かつての遺物。
「・・・・誰から聞いた」
「内緒。君は叱責するだろう」
「しっせき、じゃなくて、せっぷく、だな」
赤い唇を尖らせて、結局目の前の「お姫」は子どものようにふざけて笑った。
この件はもう、おしまいだ。
元来引きずることは嫌いな性分のようで、
「なぁ、映画が見てェな」
可愛らしい顔でまた笑った。
いよいよ眩暈がする。
封切したばかりの映画のレイトショーの為に結局車を出させた。
面白いようにはしゃいだ後は結局泊まりになり、主が使うはずの豪奢な寝具で一人眠る。
その満たされた寝顔に酷く我侭な生き物だと苦笑した。

この男が動くのはただ一人のため。
手慰みに髪を梳いてやりながら訊ねるともなしに訊ねてみる。
「…そんなにあの大男が大事か」
「………馬鹿な所は嫌いだ」
起きていたのか返答がある。
存外本気のようだった。
あの、すこぶる人は良いが、一本ネジが足りない大男は何かまた女王の逆鱗に触れるようなことをやらかしたのだろう。
女王は仕事に障ることを嫌う。
無二の親友とて例外ではないようだ。
もっとも、あの大男には隊士達も慕いながらこき下ろすという珍しい芸当をしているが。
だがあの男が「女王」の身を必死で守っていることは察しがついた。
どこか父親の顔がある男だ。
女王とは違った意味で男に慕われる男だ。
そこがまた女に疎まれる理由なのだろうが。
あの男にとっては、女王は皆が思うような貞淑な妻、ではなく、手のかかる可愛い娘なのだろう。

 

―――――――――――――

 

低血圧のせいか朝は舌ったらずなのが幼女のようで愛らしい。
「一緒にいたい」
「ああ、そうだね」
「まだ、いられるだろ」
「そうだね」

そばにいてくれるというのなら此方はいくらでも都合をつけるさ。

珍しく有給を消費した女王はずっと部屋で何事かを考えている。
ふいに、ソファにしどけなく寝そべっていた身体が億劫そうに頬杖をついた。
怠惰な様子に軽く笑って部屋を見渡す。銀色の鳥かごが空になっている。以前買ってやった鳥がいない。
舶来の銀細工の鳥篭を思いのほか気に入ったようだったので、中身に、と同じく高価な美しい鳥を用意したのだ。
「鳥はどうしたのかい」
「逃がした」
なんでもないことのように言うと、白い指をあごの下で組んでこちらを上目に見た。
「だって可哀想だろう?」
「そうか」
飽きたんだろう、とは思ったが、無骨な野郎共にでもやって、喰われなかっただけ良しとした。
何せ江戸にまだ三羽しかいない。犯罪すれすれの無理を通して輸入されたもののはずだ。
呆れるが逃がしてしまった物は仕方ない。
「鳴き声が煩い」
「そんなに頻繁に鳴く生き物じゃない筈だよ」
「昼も夜も鳴いた」
流石に動揺する。あれは求愛の為にだけ鳴くはずだ。
「色目でもつかったのかい」
あごの下で組んでいた白い指をほどくと、土方は上体を軽く起こして此方に身を寄せてくる。
「鳥なんか好きじゃねェ」
「なら、何が欲しかったのかい」
「何も」
退屈だったから。それだけ言うところりと体を仰向けにした。少し乱れた髪が頬にかかっている。とろりと視線が泳いで、睫が瞬く。
伸ばした手は拒まれなかった。
「ちっこくて弱いものは、嫌い、だ」
頬を撫でると軽く目をつぶった。痛ましい、表情だと何故か思った。

愛しい子だ。


―――――――――




だって意地が悪い。強いものは意地が悪い。
「そんなに強い男だったのかい」
答えないで宙を睨む眼差しは冷ややかだ。
何処の馬の骨かと思えば大した手だれ。かつての英雄。前時代の遺物。
キミは何ら恥じる事など無いだろうと、誰もが言ったが聞き入れない。
混沌の世において侍が居なくなったとは思わない。
しかしこの作り変えられた世において、一対一で強いことが必要なのではない。
剣術は学ぶに足りず、兵法をこそ。いつぞやの人の言を知らぬキミではあるまいに。
武装警察秘蔵の頭脳が、この時ばかりは聞き分けのない幼子のように性質が悪い。
仕方のない人だ。
抱き寄せるが抗う事はない。
本当にキミは。
「仕方のない人だ」
痛ましげに繰り返した。
こんなにも想う者があって、何が気に入らない?
刀も血も何もかも、人の子が玩具にするにはあまりに大きい。
溜息は目の前の美しい鬼を懐柔することは出来ないようだった。
「・・・明日は非番だろう? キミの行きたい所に行こう」
風流を好む鬼はようやくこちらを向くと引き結ばれた唇を僅かに開いて。
「なら海が見たい」
いとけない子どものように、そう言った。

意地が悪い、強いものは意地が悪い。だからやっぱりアンタだって意地が悪い。

「君があの大男の言うことならば何でも聴くように、君の言うことならば何でも聴くよ」
「アンタ意地が悪いな」
土方は男を睨む。
自分の言うことなら、なんだってきくという人には、そう何でもさせられないと知っているかな? 
だから君は、永遠にあの男の全てになれない。
言っても君は憤らない。
「知っている」
それだけ言うと土方は靴を脱ぎ捨て海に足を浸しに走った。

それを黙って見送る背に控えめな声がかかる。
「お帰りの際は一言仰って下さいませ」
「・・・夜半には」
おそらくあと一刻もすれば海に飽いて戻ってくるだろう。
そうしたら部屋を取るか、帰るだけか。
もとより気まぐれに此方を振り回すくせに節度は越えない、超えようとしない。
いとおしいのか、慈しみたいのか、抱き潰してしまいたいのか。
きっとどれも。

水鳥の群れが戯れに土方の周りを飛んでいる。
酷く美しい光景だ。
男はゆっくりと近づく。
「まだ、いいだろ」
帰りたくない。何も考えたくないから、と土方は此方を上目に睨んだ。
「私と離れたくないから、と言ってはくれないのかい」
「そういう手管は女に使う」
そっけなく言い無造作にかきあげられた髪が濡れている。
思い余って水に脚を浸す。
「おい、あんたまで濡れる…」
抱きしめた身体は強張らなかったが、抱きしめ返してはもらえない。
水面にうつっていた美しい姿が、奇妙に歪んだ。

 

――――――――――
作成2006/12/25
(携帯サイトでの)公開2008/6/28
 

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