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本誌のネタバレ含みます。
感想書こうかと思っていたら小話が出来上がったので。
色々捏造してます(^^)


「愛してるよ」

そう金時が臆面もなく告げると初心な土方はその整った顔に恥じらいを浮かべる。
所作のひとつひとつに金時好みの奥ゆかしい色香が漂っていて、
金時はますます笑みを深くした。
なんて愛しいんだろう、とでも言うかのように。

互いが互いにとって完璧な恋人だった。

坂田金時、頼りがいのある非の打ち所の無い男ぶりで若くして歌舞伎町の顔役を務める武闘派と、
容姿の美しさは見るものの足を無条件に止めさせる、
切れ者との噂にたがわぬ有能な武装警察のナンバー2。
立場は違えど、街の治安を守るもの同士、お似合いだと皆が言う。
誰も二人を邪魔しない。
坂田金時の恋人、金時の最愛のひと、
それだけで男女の別などという野暮なことを持ち出すものもいない。
事実二人は文句のつけようが無いほどに似合っていた。


金時は微笑みながら恋人の美しい顔を見る。
何度見つめても飽きることは無い。
その視線を受けて、
黙っていた土方がゆっくりとその形の良い唇を開く。

「……金時」
「なぁに」

優しさと親しみを込めた声で告げると。
土方はゆっくりと瞬きをした。

 

「で、坂田銀時はどこにいるんだ」

 土方はそう言うと金時を真っ直ぐに見た。

「誰それ」
金時は微笑みながら問う。

「坂田銀時、万事屋の主で、万年金欠の駄目男で、腕は立つ癖にやる気の見えねぇ、
人を食ったような掴み所のねェふわふわの天パ男」

「万事屋の主は俺。坂田金時。俺の髪はさらっさらのストレート。腕はそこそこ立つつもり」

「それは坂田金時だろ。お前だ。俺が聞いてるのは坂田銀時のことだ」

「話が見えないよ、十四郎」

「お前が知ってるんだろ。なんせ今万事屋の主はお前なんだから、前の主がどこに行っちまったかなんて」

「………キスして良いか」

「駄目。俺の質問に答えていない」

「どうして分かったの」

土方は不思議そうに瞬きをした。

「分かったも何も…お前は坂田金時だろ。で、あいつは銀時。別人だろ」

「……皆は俺が万事屋の主で、金ちゃんだって言うけどね」

「だからそれはお前だろ」

ああ、土方は。

「俺とアイツが違うって認めてくれるの」

「認めるも何も……そんなの当然だろ」

土方は何でもないことのようにそう言うと金時に向かって笑った。

それが、金時にとってどれだけの意味を持つのか知らないで。

紛い物ではなく、自分もあの男も、別々の生き物で、
自分にも人格があるのだと土方は息を吸うように理解している。

 

「………ねェ土方」

「なんだ」

「俺にしときなよ」

土方は答えない。

「俺は自分で言うのもなんだけどさ、パーフェクトだよ。アイツの欠点全部消してるんだからさ」

「確かにお前は良い男だぜ。心からそう思うよ」

土方の声は優しかったがそれは土方が他者に、内に入れていないものに注ぐ優しさだった。
無関心と言い換えることが出来る類の。

「俺じゃ駄目なの」

ねぇ、と金時は土方を、女達が見惚れるような目で見つめた。

「俺と付き合って」

「……」

「愛してる」

 

 「悪いな。もう、アイツと…その…約束、してるから」

土方は少し照れたように告げるとうす赤く染まった頬をさらにほんのりと色づかせる。

「……俺じゃ、あいつの代わりにはなれないってことか」

金時が囁くと土方はまた不思議そうに見上げた。

「何で代わりになる必要があるんだ」

「だって、俺が、」

「お前は坂田金時、女がほっとかねェ良い男じゃねェか」

「でも、土方にとってのアイツにはなれない」

「そうじゃなくて、お前はお前で、アイツはアイツだ。別人だ。俺はお前が良い男だと思うし、
良いヤツだと思うが、
俺が付き合ってるのはあの駄目男だから、そう言ってるだけで、お前に足りないところなんかひとつもねェよ」


「土方、俺にそんなこと言ったの、お前が初めてだよ」

金時は悲しい心の内を隠すようにおどけた。
この真っ直ぐで綺麗な生き物は。
自分をひとつの存在として認めてくれるのに、
その故に自分を恋人と錯覚してなどくれないのだ。

「ねぇ、じゃあキスして。そしたら教えてあげる。ね、お願い」

土方は躊躇うように視線を彷徨わせた。

「俺は機械なんだよ。別に、そんな深く考えなくて良いから」

結構重要な告白をしたが土方は大して驚くことも無く、
機械の身体を見つめた。
きゅっと手を握るとその冷たさに一瞬だけ驚いたようだったが、
土方の顔色は変わらなかった。
悩んでいるということは俺を男として、人間の男として意識しているということだ。
その煩悶すら、金時にとっては歓喜に繋がる。
機械の身体に土方の身体は温かすぎて、
涙が出そうだったが、
やはり何も出てはくれなかった。
この世に俺より冷たいものなんてないのだ。

「……やっぱり駄目だ」

「アイツに操立ててるの」

土方は肯定しなかったが沈黙し、その沈黙を肯定と捕らえて金時は溜め息をついた。

「浮気したら怒るんだよアイツは」

土方はぶっきらぼうにそれだけ言うと恥ずかしげに目を伏せた。

「じゃあ、抱きしめて」

甘えるように願うと土方は困ったように整った眉を下げたが、
聞き分けの無い子どもにするように手を優しく広げた。



ふわりと、包み込まれる感触に金時の回路が少し、ショートするような気がして。
ああ、これが恋か、
と金時は人間のように思った。


 

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