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アニ魂EDスーツ記念マフィアパラレル第5弾、
山崎と原田と土方さん。少々流血表現あり。


 

「失礼致します」

忠実な狗は視界にすぐその主を映す。
土方の黒いつややかな髪がベッドに散らばっている。
山崎が不躾で無い程度に目で追えば見事なスーツと負けず見事な身体が無造作に投げ出されていた。
この身体にどれほどの価値があるか、理解していないのはおそらく主だけなのだろう。
「脱がせますよ」
軽い頷きの気配があった。
が、身体は投げ出されたまま。
部下にはけして見せない姿だ。
山崎は軽く溜め息を吐く。
常に美しく整えられた高価なスーツに身を包み、
マフィアは何より体面を重んずるという言葉に相応しく、
他者の前で土方の総てには僅かの乱れも無い。
匂い立つ様な美貌、実際近寄れば官能的な香りがする完璧な美形。
いま香るのは洒落者の高杉が好んで、物質的欲求の薄い土方に纏わせるムスク、
そして生の土方の匂いが好きな銀時が不機嫌になる香りでもある。
オドーレ一つが争いを生むなんてどこの椿姫か、と山崎は聊か愚かなことを考える。
靴を脱がせてやった後、
タイに指をかけ、ゆっくりと解く。
真珠のように透き通った肌を僅かに色づかせ、
起きていた土方が甘えるように軽く笑ったせいで山崎も少し笑う。
柔らかな洗い立てのシーツをゆっくりとかけ、

「おやすみなさい」

長い睫の瞬きで返事をした優美な主の眠りのために静かに山崎は退出した。

 


「まるで女王のようだね、土方君」
客が揶揄する声に分かりやすく土方の部下が苛立つが当の本人はその美貌をつまらないことで動かさない。
ただゆっくりと控えた男達に視線を投げた。
瀟洒なホテルでの顔合わせの後、
馴れ馴れしげに客は土方を見据えた。
土方は答えず無意味に長い睫を動かす。
けして土方の行く手を遮ることなく、
しかし常に誰かがその傍に立ち、その身を警護している。
少々物騒な相手との交渉の場合には必ず坂田銀時がその任を負う。
それ以外にも、影で狗と渾名される男達が数人。
今日はスキンヘッドのいかにも、といった風情の男が土方の隣で目を光らせている。
影の様に付き従う小柄な男は笑みを浮かべ、無害そうに見える。
銀のアタッシュケースを持ったスキンヘッドが鋭い目つきで周囲を見渡すと己の主の傍で何か囁いた。
土方が背の高い相手のために軽く視線を上げると白い首筋がさらされて美しい。
客は笑う。
土方はなるほど、組織のナンバー2に相応しい度量と知性、大層な美貌を備えているがやや若い。
隙はあるだろう、と心で算段する。

無遠慮な視線に見送られて土方は静かに階段を降りていく。

 


突如、キィン、と鋭い金属音の後、
刃物を持った男が土方に走り寄る。
叫び声と悲鳴が一瞬で豪奢なホテルの前を埋める。
「逃がすな!」
山崎は低く吼えた。
銀の箱が宙を舞い、土方を庇って素早く原田が動いた。
即座に取り押さえられた男は顔を上げたが、
望んだ音が聞こえないことに驚愕する。

「…陽動」

土方はぽつりと呟く。

「狙撃主なら、始末しましたよ」
山崎は淡々と誰にとも無く告げた。
刃物に気を取られている間に狙撃しようという筋書き、
も交渉場所の周辺に網を張り巡らせている山崎には他愛無い計画だ。
が、土方の命を狙ったことは、
組織すべてに牙を剥くに等しい愚行。

土方は衆人環視のただなかで微動だにせず、
血の通わない悪魔だという噂に違わぬ落ち着きでその場に存在していた。
その美しさにたしかに人々は感嘆するだろう。
ああ、
と山崎は思う。

これさえ手の内なのだ。

この美しい人は、
己の命さえ、組織のためにいくらでも曝せるのだ。

そしてこの人を守るために俺は存在している。

愚かな生贄はその出自に僅かな傷を抱える土方に罵声を浴びせようと口を開く。
血統を重んじるのが旧態依然とした組織の常。
若い土方達の組織には馴染みの薄い思考。

土方の命を狙うということがどういうことか、
今この場で総てに知らしめる必要がある。

山崎が目配せすると原田が動く。
見事な蹴りが口元に入り、血と汚らしい唾液が固い地面を汚す。
阿吽の呼吸。

「ファック、とでも言いますか?」
にこっと笑った山崎は素早く相手の額に銃を突きつけた。

「神の御許では口を慎みなさい」
死者はその魂を神の御許ではかられるというのはどこの国の物語だったか。
山崎のやや奔放な知性は場違いなことを考えさせる。
土方からは見えないその顔が、どんなものなのか、
知るのはいつもこの世からいなくなるものばかりだ。

「…Amen」
銃声が響く中、無意味に祈りの、
或いはそれに準ずる何かを呟くと山崎は静かに銃を仕舞った。
殺傷音にかき消されたそれにどれほどの意味があるというのか。
だがそれはもはや山崎にとって一種の儀式だ。

「信仰の前にすべてが赦されるとすれば」
山崎の呟きを原田が拾う。
「人殺しが何をいわんや、だな」
そして苦笑した。
山崎はいつもどおり機械の様に正確な声を出した。
「原田さん、片付け手伝っていただけます?」
「もう手配しといたぜ」

階段に愚かな生贄の赤い絨毯がひかれ、
つまらなそうに歩く土方は、
まるでムービースターのようだと背後で二人して笑った。

 

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