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突如、坂土。
インチキ方言、ご容赦ください。
土佐弁のハンディが辛いのですが、坂本好きです…方言へのお叱りだけはご勘弁を…
あと、微妙に官僚×土方さんです。










「君が欲しがっていた玩具を用意したよ」
告げられて連れて行かれた店で出逢った男は人好きのする笑みと気の抜けた笑い声を響かせ、
独特の懐かしい言葉で話す。
宇宙をまたにかけ手広く商売をし、惑星間の対立組織の間でも自由に行き来する男。
快援隊の坂本辰馬といえばその道ではちょっとした有名人。
「はじめまして」
笑った顔は相手より少しぎこちなかったかもしれない。

「スーツが似合うきぃ」
そう言うとすぐに男は相好を崩す。
「そちらが洋装だと伺ったから」
此方が真選組の副長だと知っての発言だろうが、それ以上深くは踏みこまない男に、やや軽薄な風貌に反して賢いのだと知れる。
評判の右腕はなかなかの才女だそうだが、ただの男があの規模の会社のボスになどなれないだろう。
組の予算とは別会計での個人的な「玩具」の入手は選抜きの部下の強化の為だが、男の口がうまいのか自分でも使いこなしてみたくなる。
戦術のバリエーションの幅が広がるたびに暗く胸の疼くような喜びがある。
男の扱うものは人殺しに相応しい玩具だ。

「仕事の話はここまでにしちゅうか」
にこにこと笑いながら男…坂本辰馬は気前良くオーダーを追加する。

夜景を一望できる摩天楼の個室には場違いなほど軽快な笑い声が響き渡る。
目の前の男が何となく好ましいのが不思議だった。

――――――――――――――――――――


商売の上ではかなりのお得意の幕府高官に連れられてやって来たのは真選組の「女王様」。
陸奥の機転で用意されたスーツに身を包んで望んだ商談の席で、やはり相手も高価なオーダーメイドスーツ。身体のラインにぴったりと寄り添う細身で繊細なデザインと縫製はどうみても特注品の艶。
外の喧騒を互いに持ち込まない暗黙のルールの成立。
黒衣の死神のような隊服を脱ぎ捨ててしまえば、綺麗なお人形のような男だ。
愛玩人形にしては目の光が此方を射殺しそうに鋭いが。

その女王様が思うより気安いのに今、とても驚くと同時に愉快でたまらない。
目の前で気持ちよく飲んだ酒がまわったせいできゃはきゃは笑うような女王様はご機嫌だ。
ザルのような自分としてはこの程度の酒量でこんなにもご機嫌になる生き物は掛け値なく愛らしい。

「マヨネーズのタイピンわぁ初めて見たっちゃ」
気になっていた部分に突っ込むと気分を害した風でもなく、男は笑った。
「ライターもそうなんだぜ」
子どもがお気に入りの品を自慢するように何度も火をつけてみせる。

なるほど、食事にマヨネーズを持参するのはダテじゃないということか、と辰馬は考えて笑う。
実際に金を出す立場の幕僚はその仕草を優しげに眺めているだけで何も言わない。
(こっちの傾倒ぶりはもっと凄いき、こりゃあ良いお客じゃ)
「今度ウチで試作品作っちゃるきぃ、ナンかあったらゆうとおせ」
横の偉い男が何でも買い与えるのだろうが、
可愛いマヨの女王様に何か自分から面白いものを贈ってみようと決めて、ふたりして笑顔で別れた。


ゴキゲンですね。
出来る男は上司の着替えを手伝いながら微笑んだ。
ハイヤーで送るのを断って可愛い狗の運転を選ぶのはいつものことだ。


意外にも変わった遊びが好きなもの同士が羽目を外して酔って帰ることが数回。
しばらくは江戸にいると言っていた坂本はあまり煩わしくない頻度で土方にコンタクトを取った。
「副長ったら、最近あの社長さんがお気に入りですね」
酔って帰った土方はご機嫌に歌を歌いながら山崎のお小言にもならないお小言に笑いながらくるくるとマヨネーズ型のペーパーナイフでその日の手紙を開封する。
「それ、面白いですね」
「だろ?作ってもらった」
「あぁ、最近多いですよね」
マヨグッズ、元々どこで買うのか不思議だったけれど本人から「特注」という返事があってから
は納得。
「副長の特注、は自分で頼んだって意味じゃないですもんね」
ご機嫌な土方は聞いていないのか、鼻歌を歌っているので山崎は苦笑する。
この人の為に皆色んなマヨグッズ作ったもんな~。
部屋中にちまちまと置かれたマヨ形灰皿やコップなんかにまた苦笑する。
(美形なのにこんなものばっか好きなんだもんな~)

少なくともナルシストでは無いのだろう。

―――――――――――――――――――――
 

近藤がスナックすまいるで張り倒された先で、股間に強烈な一撃を喰らって悶絶していた坂本にぶつかったのは本当に偶然。
互いに顔を見合わせて、非礼を詫びると坂本の大きな叫び声が響く。
「おお、しっちゅうよ、おんしゃあ土方君の上司じゃろ?」
そういわれて近藤は目の前の男が最近の土方の夜遊びの相手なのだと合点が行く。
「おりょうちゃーん!!!」
「あ、いえ、あ、お妙さーん!!!」
その日は双方そこで会話を終えた。

それから数日後、穴場の飲み屋で鉢合わせたふたりはどちらも大柄で場の面積が狭くなったよう。
「いつもウチのトシがお世話になってるみたいで」
人好きのする笑顔で近藤勲は坂本に告げた。
「まぁ、座りんしゃい」
商売人特有の如才ない物言いで席を進められて断る理由の無い近藤はやはり素直に腰かけた。

大男がふたり並んで静かに酒を飲み、意外な程騒がしくない空気に普段の近藤を知る店主は意外に思う。

「お宅の副長さんにまた面白いものが手に入ったといっとおせ」
にこにこ笑いながら告げた坂本に、少しの間の後、近藤は意を決したように口を開く。
「アイツは皆の見本だからあまり連れまわされると・・・」
ここのところずっと、遊び歩いてふらふらになって帰ってくる。
前から悪い大人の男に好かれることは薄々気付いていたが見てみないフリをしていた。
「ヘッドハンティングじゃ」
「トシは副長ですから」
「冗談っちゃ」
笑いを抑えたような顔で坂本は大きなサングラス越しの眼で近藤を覗き込む。
「おりょうちゃんに聴いちゅうよ。おまん、おりょうちゃんの仲良しのこぉに惚れちょるんじゃろ。
ならあの子はもらってもいいっちゃ?もちろん、仕事の相方はデキル女子がいるけぇまにあっちゅうが」
今度は何を言い出したのか、近藤勲の脳が反応する前に
「わらっちょらん」
坂本は自分こそ笑っていない顔で告げた。
「・・・おっしゃってる意味が」
「おまん、一瞬目ぇが笑っちょらんかった。怖い顔じゃ」
坂本は喉の奥で楽しげに笑った。
「アレは俺のもの、って顔をしちゅう。おんしのそれは仕事とは違うところじゃろ」
坂本はそう言うと一息で手元の酒を飲み干した。
「しっちょっか。男のそういうんがいっちょん見苦しいもんなんじゃ。おんし、あの子には気づかれんようにせいよ」
お勘定、と立ち上がった坂本の残した言葉の意味を近藤はその夜の間中考えていた。





「ああ、近藤さん。おかえり」
屯所に帰ると起きていたのか、土方が夜着のままで近藤を迎えた。
その見慣れたはずの姿を何故だか直視できない。
待っていてくれたのか、と聞こうとしたが出来なかった。
ふわ、とあくびをすると土方は白い指先で近藤の頬に触れた。
「この馬鹿、また殴られてんな。明後日は登城だろ」
少し怒ったような顔でそう言い、指を離す。
山崎に診てもらえよ、と言いながらまた土方はあくびをした。
「じゃあ、俺は寝るよ」
「トシ、俺は」
「ナンだ?」
振り返った友人は不思議な目をしている。
「いや、なんでも、ない」
ふうん。思うより無防備な友人は肩をすくめただけで後は何も言わなかった。
伸びをすると今度こそ本当に眠りに行ってしまう。
闇に溶け込むまでその背を見送った。


お前はいつか。いや、なんでもない。

お前は皆の理想で、俺の理想で、だから。
お前はここで朽ち果ててくれないか。

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