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店の売り上げを計算し、月イチの高杉への報告書をまとめた後、万斉も店を完全に閉めた。
オーナーの高杉は警察の手入れがあるという話を恐るべき情報網で掴み、風営法の規定内のワット数

に全ての電灯を切り替えさせ、細かな調整を言い渡していった。
怜悧な計算はシビアなこの業界で生き残っていくための手段だから万斉も何も異を唱えたことは無い。

クラブ「アルファヴィル」。高杉の趣味かは定かではないが、皮肉な名前に相応しい新型風俗店。
非接触型風俗をこの界隈で有名にしたのもこの店。


裏メニューはその一番美味しいところを法外な値段と引き換えに味わえる。
土方十四郎はその大事な役目を果たしている。
酷く繊細な美少年だ。


「十四郎、これも喰え」
つい、と差し出された料理に土方が笑みを浮かべる。
「エビマヨ、好き」
「じゃもっと喰え」
もっと、もっと。いつも高杉はなるだけたくさん食べさせようとする。いつもは帝王のような男が、自分のた

めに手ずから皿に料理をよそってくれるのがくすぐったい。
「細っこい身体じゃ、いざってとき困るだろ」
自分だって細いじゃないか、と思うのだが、高杉は強い。
恐ろしいくらいに。
それはありとあらゆる種類の痛みと関わってきたからなのだろうか。
土方はいつも考える。
「十四郎、手が止まってる」
「あ、うん…」
頬杖をついて横目に土方の食事を眺めていた高杉が
(行儀がよくないから真似するなと万斉に言われた)
土方の眼をじっと覗き込む。
「何か悩んでんのか?」
「ん……」
言ってもいいかな、と少し考えて、高杉に隠し事はいけないなと思いなおす。
「金時さんに言われた」
「何をだ」
「今度プレイしないかって」
「いつもしてるだろ」
「見るほうじゃなくて、殴られるほ…」
「駄目だ」
ガタンと音がして高杉が身を乗り出す。
「…殺されるぞ」
大きな音に反応して外にいた「護衛」が部屋を遠慮がちに覗く。


「うん。俺もそう思う」
冷静に返事をした土方を見て、護衛たちは安心したようにまたドアを閉めた。
高杉はドアを振り向きもしない。
「今までどおり。お前は見るだけ。いいな」
噛んで含めるような優しい口調で高杉は告げる。
「うん」
「今後も客から誘われたら俺に報告しろ。出入り禁止にしてやる」
「金時さんは、ふざけてただけだよ」
「次は無いって言っとけ」
「ん」
そのまま、伸ばされた手に目を細めて、土方は優しい抱擁を受け入れた。
高杉の手が何度も土方の頭を撫で続ける。
「今日は泊まってけ。明日送っていってやるから」
「うん」
高杉の肩に寄りかかるようにして、土方はゆっくりと眼を閉じ、深く呼吸をした。


風呂を借りて良い気分の土方に万斉がミネラルウォーターを差し出す。
礼を言うと受け取って、ゆっくり飲みながら音楽に耳を傾けた。
何故か、いつも高杉の部屋には音楽がかかっている。
クラッシックもジャズもロックも、不思議なくらい部屋にあう。

「十四郎」
呼ぶ声に振り向くとそのまま優しく顎を捉えられた。
思い当たって目を閉じる。
そっと、羽がふれたような柔らかな感覚が唇におちる。
「ん……」
「おやすみ」
「うん…おやすみなさい」

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