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「土方殿は晋助を愛しているのでござるか」 「さぁ、どうだろう」 愛していないわけじゃないんだが。 「良いでござるよ、それで」 「そうか?」 「簡単に愛しているなどといえる間柄ではござらんだろう?断言されたほうが嘘に聴こえる」 「断言できない時点で嘘かもしれない」 「土方殿は偽悪的でござるな」 「本物の悪人だ」 「そうは思わぬ」 「じゃ、そう思っててくれ」 瑠璃色の杯を傾けた土方に極自然に酒を注いでやりながら万斉は少し笑った。 「毒が入っていたらどうするでござるか」 「死ぬな」 あっさりといわれて少し笑う。 「怖くは無いのでござるか」 「俺を殺す気ならもっと残忍な方法をとるだろ」 「拙者は快楽殺人は嫌いでござる」 「嫌いでも、真選組副長を殺すには、見せしめに物凄く残忍な方法をとるのが当然じゃないか。俺ならそうする」 沢山殺したから。と呟く顔には何の感慨も浮かんでいない。 「他人事のようでござるな。ま、拙者は合理主義者ゆえ、真に必要とあらば趣味でないこともするが、美学はギリギリまで貫くのが男とも思っているでござる」 「だから山崎を助けたのか?」 「…あぁ、あの男。おぬしに心酔しておったな。おぬしのためなら死も厭わぬ鋼の忠誠心は見上げたもの」 「心酔してるかは知らねェが、あれは俺の狗だからな」 「見事でござるよ」 「やらねェぞ」 「これは…土方殿の口からそのような言葉が出るとは意外」 「俺の狗だ」 「拙者はあの男がほれ込むおぬしのほうにこそ興味があるのでござるが」 本気ともつかない黒いレンズごしの目を見透かすように、土方は静かに万斉を見つめた。 「……すぐ飽きるさ」 「そうは思わぬ」 「じゃ、もう少し興味だけ持っててくれ」 赤い唇が一息で酒を飲み干した。 「つれない御仁だ。晋助が梃子摺るわけでござるよ」 「高杉が梃子摺ることなんてあるのか」 「土方殿は少々鈍いのでござるな」 「人聞きの悪い」 「晋助はおぬしが隙を見せるのを待っているでござるよ」 「今ここで隙だらけだぜ」 「そうでござるが、心の話は別でござろう」 「ふん……」 行儀悪く寝転んだ土方を特に咎めず万斉はそっとその手から杯を取ってやる。 しばらく宙を見ている土方を万斉が覗き込む。 「だれにも見せないつもりでござるか」 胸の辺りをそっと撫でると土方は酔ったように目を閉じた。 「晋助にくらい見せてやってはくれぬか」 土方の着流しの襟元から覗く白い肌に滑らせた指先を、ゆっくり捉えられる。 そのまま土方の指が少しの間、万斉の指を弄んだ。 「人きりの手だな」 「血の匂いがすると言ったのは初めて逢ったときでござるか」 「さぁ、どうだったか……」 眠くなったのか、万斉の指を開放した土方の指が自身の白い瞼にふれ、幼い子どものように擦る。 「土方殿、そのようなことをしては傷がつく」 そっと指を捕えると土方が目を薄っすら開く。 「まぶしい…」 「明かりを落しても良いが、晋助に誤解されては拙者の命が危ない」 「じゃ、帰らせろ」 「それは出来ない相談」 「……わかった。じゃ、ちょっと眠らせろ」 「今、床の用意をさせるでござるよ」 「ん………悪ィな」 少しして腋下に万斉の両腕が差し込まれ、抗う暇も無く荷物のように抱き上げられた。 軽々と持ち上げられたことに土方は少しだけ、ほんの少しだけ悔しいような気がした。 「重いだろ」 「いや」 「それも嫌だな……」 「激務が続けば軽くもなるでござろう」 「……なんでお前はそれを知ってる」 「企業秘密でござるよ」 ゆっくりと蒲団の上におろされて、憮然とした表情の土方に笑ってみせる。 「おやすみでござる」 「……おやすみ」 基本的に育ちが良いのだろう、口は悪くとも礼儀正しい土方はきちんと言葉を返す。 それを微笑ましく思いながら万斉は退室する。 ぱたんと襖が閉じられた音を土方は意識の底で聴いた。 PR ![]() ![]() |
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