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実はとてもステキないただきものがありまして、今にこにこしています。
あまりにも美麗!
直にでも飾りたいのですが、どうせならSSをつけさせていただきたい!と思ってかりかり書いているのでアップは先になりそうです。

そんなわけで、以下にアヤカシ設定の小話を。
「弐月三日」
アヤカシ部屋にある去年の「二月三日」の翌年のお話です。
落ち着いたら移します。

銀魂はサザエさん方式だから翌年といっても土方さんが何歳なのかはぼかして考えてます(笑)
アヤカシ設定、好きに書いてますが好き、読みたいと仰ってくれる方がいらっしゃるのでとても嬉しいです。
以下からどうぞ。



『弐月三日』




 

膝の上にぽとんと落ちてきた塊は土方を見上げて大きな眼をギョロギョロさせ、
ひしっとしがみつく。
何の気なしに頭を撫でてやるとわらわらと集まってくる子鬼達。
六、七、いや・・・九。
随分と沢山だなと土方はどこか遠いことのように思った。

子鬼の顎を猫の子にするように撫でていると、多分笑っているのだろう、ぎちぎちと声がした。
山崎に言いつけて、部屋には食事と、菓子の類が置いてある。
弐月三日にこうしていていいのか、はわからない。
が、別段どうということでもない。
子鬼はぽとりとまた、落ちてくる。
毎年これならしまいには部屋が埋まるな、と馬鹿らしいことを考えて土方は笑う。



ふと、気配が変わって、部屋の空気が一瞬で緊張する。
子鬼達がその場に座り込んで、それから居住まいを正すように正座し、小さな頭を地面に擦り付けた。
土方が一瞬目をとじて開くと。
「ここか」
酷く整った顔をした男が現れた。
男、と言っても頭に角、口には牙を持った、まさしく鬼と呼ぶに相応しい背の高い男は座したままの土方の前に進み、呟いた。

「子鬼どもが世話になったようだな」
男はそういうと土方を見つめた。
白い着物に足袋をつけて、不思議なほどに良い匂いがする男だ。
銀色の髪、と土方は関係ないところに少し、目を瞬かせた。

「堅苦しいマネは良い。お前たち、楽にしていろ」
子鬼達は頭を上げると、しばらく顔を見合わせていたが頷き、また土方の傍に集まって座り込む。
膝に上ってきた子鬼を、やはり土方が静かに撫でていると男が口を開く。

「貴公、名は」
穏やかな声、に素直に口を開く。
「土方だ」
ひじかた、と口の中で転がすように囁いた男は、美しいが表情の無い顔で続けた。
「では土方、私が恐ろしくは無いのか」
土方は首を傾げた。
「恐ろしいことでもするのか」
男は少し眉を寄せた。心外だ、とでもいうように。
「せぬ。が、私の姿が恐ろしくないのか、と問うている。人の世に鬼と言われる私が」
ん、と喉の奥で少し声を重ねた土方は指先を子鬼の顎の下に滑らせ、その喉を鳴らすさまに目を細めた。
「・・・俺の通り名は、鬼の土方、だ」
笑っちまう、そう言うと土方は喉の奥で笑いを殺すように唇を上げた。
「鬼というなら俺こそがそうなんだろう。何せ、随分殺した」
「・・・・・・雅な鬼もいたものだな」
鬼・・・男はそれだけ言うと土方をじっと見つめた。
「傍に座って構わないか」
頷くと男は音を立てずに近づいて、ゆっくりと膝を折り、土方の前に座した。

子鬼が緊張したのか、土方の服の裾を掴んでいる。
長い指で土方がそっと撫でてやると強張りが溶ける。
男は土方の動作を静かに見ていたが、ふっと唇を笑みの形にした。

「子鬼がかどわかされているのではないかと足を運んだが…どうやら杞憂だったようだな」
男はそう言うと、空いているほうの土方の手をそっと取る。
ひやりとした手だ、と土方は思う。

「ひとの血を吸わぬ指だ」
静かに呟くと、男はそっとその手を土方の膝の上に戻した。

「なぁ、アンタ・・・呑まないか」
土方は膝の上にそっと戻された手を一度そっと握り締めてから、男を見上げて囁いた。
男は驚いたように目を見開いたが、少し幼い仕草で頷いた。


血よりも紅い、とろりとした色合いの杯に注がれた冷酒に男の目が細まる。
「良い酒だ」
「貰いもんだが、悪くないだろう?」
土方はそういうと濡れて光る唇に構わず酒を呷る。
男は不思議そうにその様を見て、静かに飲み干した。
「随分と豪胆に呑むのだな…」
土方が首を傾げると男は目を伏せた。
「悪くはないが、貴公の雅な顔に合わぬ仕草だ」
それだけ言うと、男は笑った。
土方は気にした風でもなく、やはり男らしい仕草で酒を呷った。




夜半、いつのまにか眠っていた、と土方はぼんやりと眼を開けて思った。
見渡せば部屋の中で仰向けになって、子鬼達はまだ眠っている。
満足そうに膨れた腹だけは、毎年変わらない。

土方は誰かにかけられていた羽織を着なおすと、障子を開けて庭に出る。

男は庭に静かに立って月を見ている。
ゆっくりと庭に降り立った土方を振り返り、
「目覚められたか」
男が言い、土方は頷いた。
「これ、アンタか」
羽織を摘んで問うと、男は少し笑って頷く。

「貴公は酒に弱いのだな」
土方が困ったように応えあぐねていると、男はまた笑う。

「構わぬ。貴公はそのくらいが愛らしい」

土方がわからないことを口にした男は、前を見た。

「鬼というのは、恐ろしいのだと、ひとは言う」
男はぽつりと零す。
「しかし、鬼には鬼の理があり、ひととは相容れぬものでありながら、近しいのだろうと私は思っている」
風が吹く。
舞い上がった着物の裾が闇夜に映え、ふたつの影が馴染む頃。
「俺が恐ろしいのは、人の形をした生き物のほうだ」
土方は静かにそれだけ言うと、薄く笑った。
男は土方を見つめて、その目の奥の色を伺うように、じっと覗き込む。

「貴公の哀しみが、私にはわかる」
男はそう静かに言うと、土方の頬にそっと触れた。
まるで酷く壊れやすい細工にふれるような仕草だった。
そのまま、ゆっくりと、男の顔が近づいてくるのを、どこか遠いことのようにやはり土方は思った。

「…ひとはこわい」
そう、唇が触れ合う刹那、土方は密やかに零した。

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